つい先日も、
『自立式土留(親杭・鋼矢板等)で、剛性の大きな材料ほど根入れ長が長くなるのはなぜですか?』
という問い合わせがあったばかりですので、取り上げてみました。
自立式の根入れ長は、『Changの方法』と呼ばれているものによって算出されるのですが、以下その手法と例題をふまえて説明したいと思います。
自立式土留めの根入れ長(ℓo)は、【式A】にて算出することになります。

式中のβ値は、杭の特性値と呼ばれているもので、【式B】で求めます。

ここに、
kH:水平方向地盤反力係数で、通常1/βの範囲の平均値(kN/m3)
B :土留め壁の幅で、親杭は杭幅、鋼矢板の場合は単位幅(m)
E :土留め壁のヤング係数(kN/m2)
Ⅰ:土留め壁の断面二次モーメント(m4)
例えば、
kH = 100000(kN/m2)(N値15に相当)
E = 2.0×10^8(kN/m2)
として、鋼矢板のⅢ型・Ⅳ型を例に、β値並びに根入れ長を計算し、比較した結果を下表に示します。
【鋼矢板Ⅲ型、Ⅳ型の根入れ長比較結果】
鋼矢板 | 断面二次モーメント(m4) | 特性値β(m-1) | 根入れ長ℓo(m) |
---|---|---|---|
Ⅲ型 | 17400×10^-8 | 0.9208 | 2.715 |
Ⅳ型 | 38600×10^-8 | 0.7544 | 3.314 |
従って、土留め壁の剛性を増したのだから根入れ長は小さくなるはず!と錯覚しがちですが、計算式の仕組み上、根入れ長は大きくなるので、注意が必要です。
以上、今後の参考にしてみて下さいね。